★☆★=============================== 日本キャリア教育学会ニューズレター 第94号(2017.11.10発行) 発行:日本キャリア教育学会 情報委員会 https://jssce.jp/ ================================★★ □■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【開催報告】日本キャリア教育学会第39回研究大会(1) 日本キャリア教育学会第39回研究大会実行委員会 委員長 上越教育大学学校教育研究科 山田智之 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2017年10月13日(金)プレ企画・14(土)・15日(日)に日本キャリア教育学会 第39回研究大会が上越教育大学において開催され、約200名の方々にご参加 いただきました。当日は十分行き届かなかった点が多々あり不便をおかけし ましたが、皆様のおかげで盛会のうちに終了いたしましたことに深く感謝申 し上げます。 さて、今大会は新しい小中学校の学習指導要領に「キャリア教育」という 言葉が加わり、その重要性に対する認識も高まりつつある中、大会のテーマ を「つなぎ・そだて・うごかすキャリア教育『点・線・面から未来へ』」と 設定し、「農場からシンカする」をテーマとした株式会社穂海代表取締役 丸田洋様による基調講演、「新しい学習指導要領とキャリア教育~戦後教育 の歩みをみつめて~」をテーマとした、仙﨑武様(日本キャリア教育学会 名誉会長)、長田徹様(国立教育政策研究所総括研究官)、林晃彦様(上越 市立城北中学校校長)をシンポジスト、三村隆男様(早稲田大学院教職研究 科教授)をコーディネーターとする実行委員会企画シンポジウム、「キャリ ア教育研究ライブ:論文投稿への力強い一歩」をテーマとした研究推進委員 会企画シンポジウムをはじめ、5件の会員企画シンポジウム、50件の口頭発 表、29件のポスター発表が行われ「キャリア教育における点・線・面をどの ように、つなぎ、そだて、うごかすのか」について活発な論議が行われまし た。戦後72年が過ぎ、科学技術の発展とともに多様なキャリアが生まれ、歴 史と教訓の中から、未来への知恵を探らなければならない時代の中にあって、 今大会がこれからのキャリア教育を探求する契機となれば幸いです。 最後になりましたが、ご共催いただきましたARACD(Asian Regional Association for Career Development)様、日本教育大学協会様、上越キャ リア教育研究会様、全国中学校進路指導キャリア教育研究協議会様、東京都 中学校進路指導研究会様、東京都小学校キャリア教育研究会様、ご後援いた だきました新潟県教育委員会様、上越市教育委員会様、妙高市教育委員会様、 糸魚川市教育委員会様、また、ご協賛くださいました企業・団体に対し心よ り感謝の意を表させていただきますとともに、平成30年度に開催される第40 回研究大会(早稲田大学)の成功を祈念し、お礼の言葉とさせていただきま す。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【開催報告】日本キャリア教育学会第39回研究大会(2) 日本キャリア教育学会第39回研究大会実行委員会 委員 上越教育大学学校教育研究科 修士2年 箱田優也 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第39回研究大会が盛会のうちに終わりましたこと、ご参加いただきました 皆様に深く御礼申し上げます。本大会が、今後の皆様の研究や実践にお役立 ていただければ幸甚に存じます。 さて、本大会の運営に際しまして、私を含め大学院生を中心に20名程度の 学生がお手伝いさせていただきました。大会準備や、大会HPの運用、当日の 進行など様々な形で携わらせて頂き、多々不手際があったかと存じますが、 私どもにとってはご参加いただきました皆様との関わりが、社会人基礎力育 成の場であり、まさに自分自身のキャリア教育の場であったと感謝しており ます。また、キャリア教育に携わる多くの方々の存在を肌で感じるとともに、 非常に多岐に渡る研究や、研究を支援するシンポジウムなどを拝聴する中で、 大学内に留まった自身の学びに対して、視野の狭さを自戒する契機となりま した。 特に、仙崎 武 先生のご発表では、内容も然ることながら、長年に渡って キャリア教育を推進し老成円熟されたお姿を拝見し、これから教師や社会人 としてのキャリアをスタートする学生にとっては大変感銘を受けました。上 越教育大学の学生は、多くが教師としてのキャリアを志望しております。子 ども達のキャリア教育を推進するためには、まず教師自らが何歳になっても 常に成長し続けるキャリアを歩むことが重要だということを、体現して頂い たように感じております。 末筆ながら、大会運営に際して多々不手際があったかと存じますが、寛大 なご対応を下さいました参加者の皆様に感謝申し上げ、ご挨拶とさせて頂き ます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【開催報告】日本キャリア教育学会第39回研究大会(3) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日本キャリア教育学会第39回研究大会に教職大学院の院生として参加させ ていただきました。 初日に行われた基調講演では、学生から社会人に移行した段階で社会人基 礎力が欠如しているケースが多い現状を知り、この現状を踏まえて来年度以 降教員として指導に携わることに大きな使命を感じました。また考える経験 の不足、中でもリスクマネジメントの根本的な考え方は大変印象的でした。 実行委員会企画シンポジウムではキャリア教育の歴史から改訂が迫った学習 指導要領まで、幅広く最新情報を絡めた深い議論をお聞きしました。特に、 日本キャリア教育学会名誉会長の仙崎武先生の貴重なご経験とお考えをお聞 きできたことに非常に感激しました。「偶然をどう偶然でないととらえ、チ ャンスに変えるか」というお言葉は、人生の様々な出来事を轍と表したキャ リアの考え方につながるのではと思いました。教育研究懇談会では、上越教 育大学の先生方やスタッフの方々のホスピタリティに感銘を受けると同時に、 研究の第一線で活躍しておられる先生方にご挨拶させていただけ、大変貴重 な時間でした。 2日目は、同時進行で進められた各種発表に参加し、現在研究課題として 進めている内容とリンクするご発表から周辺知識の理解を広げられたととも に、興味深い新たな研究領域を知り大きな刺激を受けました。 非常に濃密なプログラムに、今後の学びに対する期待で胸がいっぱいにな りました。今後大切にしたいと思ったキーワードは「チャレンジ」です。講 演やシンポジウムで知見を広げると同時に、口頭発表やポスター発表で多様 な研究内容に触れ、私自身も研究に貪欲になり失敗を恐れずチャレンジする 姿勢でい続けたいと思いました。来年度から中等教育の教員へと立場は変わ るものの、このような学びの機会に積極的に参加し、自らの課題意識を深め 追及していきたいと思いました。貴重な機会に参加させていただいたことに 大変感謝しております。 (文責 早稲田大学大学院教職研究科 修士2年 権田夏美) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【資料紹介】国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター キャリア教育リーフレット1 「高校生の頃にしてほしかったキャリア教育って何?」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センターでは、キャリア教育 リーフレット1「高校生の頃にしてほしかったキャリア教育って何?」を 発行しています。 高校生の頃を振り返って「もっと指導してほしかった」と思う学習内容に、 「自分の個性や適性を考える学習」「進学にかかる費用や奨学金についての 情報」「社会全体のグローバル化(国際化)の動向についての学習」などが 挙がっています。 その他、時間がたってから「役立つ」と感じられる学習内容、高校生のと きに「取り組んでおきたかった」学習内容など、キャリア教育の実践に役立 つ情報が豊富に掲載されています。 本学会会員の立石慎治先生、京免徹雄先生も作成に参加しています。 リーフレットは下から http://www.nier.go.jp/shido//centerhp/syoukyari/Carrier_series2017_A4_0331.pdf その他の進路指導・キャリア教育関係の資料も数多くあります。 http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/3.htm#sinro ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【書評】 『<OECDスキル・アウトルック2015年版>若者のキャリア形成 -スキルの獲得から就業力の向上、アントレプレナーシップの育成へ-』 (経済協力開発機構(OECD)編著、菅原良・福田哲哉・松下慶太 監訳、 竹内一真・佐々木真理・橋本諭・神崎秀嗣・奥原俊訳 明石書店 2017) 労働政策研究・研修機構 深町珠由 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 若者が学校を出て職業に就き、社会で活躍することに際し、先進各国は若 者の高失業率や不安定就労の増加など、それぞれに課題や悩みを抱えている。 本書は、16~65歳までの成人を対象にOECDが実施したPIAAC(国際成人力調査) の分析結果を中心として、若者のキャリア形成上の課題や対処策に焦点をあ てて執筆された、OECD報告書の翻訳である。 本書の構成は、若者の発達上の流れに沿って、大きく三つの部分に分かれ る。まず第1章では、OECD諸国に共通する若者就労に関する現状と課題が総 合的に提起される。第2章以降は、学校段階の若者に関する課題と対処策 (第2、3章)、学校から労働市場への移行に関する課題と対処策(第4、 5章)、就職後の若者に関する課題と対処策(第6、7章)、という流れで 論じられている。 先のPIAAC調査で、日本の若者は、PISA(OECDによる生徒の学習到達度調 査)と同様に、特に読解力・数的思考力といった認知的能力において極めて 高い成績を修めている。また日本社会は、新規学卒一括採用という独特の慣 行により、スキルのない新卒者でも失業しないで済む仕組みが依然として機 能している。こうした特徴を踏まえると、若者の能力不足や失業率の高さを 大きな社会問題として抱える国々の悩みは、日本にいる我々にとっては「よ その国の話」に聞こえ、あまり危機意識を感じないかもしれない。しかし本 書では、ニートや学校中退者、低スキルのまま卒業する若者への継続した支 援の重要性や、学業から就労へとスムーズに移行するために、硬直化した教 育制度を変革し、時代とともにアップデートされる知識・技能の修得を含む 職業教育を柔軟に取り入れることの重要性を繰り返し説いている。それは若 者の現状如何に関わらず、どの国にとっても重要な視点であることは間違い ないだろう。 さて本書の最後では、就職できない若者のスキルを陳腐化させないための 秘策として、敢えて「就職」にこだわらず、若者の「起業」支援へと活路を 見出しており、その制度的な障壁をなくすための努力を各国に促している。 正直なところ、就職できないタイプの若者が一足飛びに起業するという結論 には、唐突感が否めない。ただ、起業とまではいかないまでも、職業の世界 で自律的に活動する意欲を持たせるようなキャリア教育を目指すことは、日 本社会でも今後十分生かせる素地があるのではないか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 【コラム】HR業界と大学院を両立する中で思うキャリア 株式会社クラス人材紹介事業部、 大阪教育大学大学院職業科学研究科 原田大地 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 私は新卒で人材業界の企業に就職すると同時に、夜間の社会人大学院に通 っています。仕事では人材紹介事業に携わり、求職者へのキャリアカウンセ リングなどを実施し、仕事で出た課題などを大学院での研究で解決したいと 思い、今の道に進んでいます。10人10色のキャリアをサポートしていくには キャリアに関する研究を活用していくことは非常に大切であると、日々感じ ています。 その中で私自身課題であると感じていることを少し書かせていただきます。 年間転職者が300万人を超え、「転職社会」へ向かっている日本。人材不足 が顕在化しはじめ、益々個人のキャリアに向き合うことを人材業界では求め られています。 人材業界では一番の課題に「人材不足」が挙がっています。新卒、中途採 用いずれも売り手市場となっている今、働く人々の意識も変わってきている と感じています。各企業の人事の方とお話しをしていると「今は昔より容易 に転職できる。この環境で辛抱してキャリアを築こうという意識が低下して いるように思う。面接をしていても前職の不満から転職する人が増えている」 とよく聞きます。 もちろん、転職を繰り返すことが一概に悪いとは考えませんが、AIなどが 本格的に雇用に影響を与え始める時、現状のままでは雇用環境は壊れてしま うと感じます。この先、オックスフォード大学のオズボーン教授が予測する ようにAIの導入が進めば、技術的失業が多く出る可能性が高い。10年後すら 見えない現代だからこそ、汎用的能力、専門的能力を自らが決めた道で高め ることが失業を防ぐと言われている。 登っている山から途中下山がより容易になっている現代だからこそ、自分 の生活を含めたキャリアを再考し、最も最適と考えられる道を自分自身で選 択が必要とされていると思われます。先行き不透明な社会だからこそ、自律 的なキャリア形成が必要であり、専門性を身につけていくことが重要ではな いだろうか。そのため、早期からのキャリア教育が益々、求められると考え ており、期待されていると考えております。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━