倫理綱領

日本キャリア教育学会 倫理綱領

前文
日本キャリア教育学会会員は、すべての人の基本的人権と尊厳に対して適切な敬意を払い、これを侵さず、人間の自由と幸福の追求の営みを尊重し、キャリア教育に関する研究および実践活動に携わる。そのため、常に専門家としての自覚をもち、自らの行為に対する責任を負う義務をもつように努める。研究・実践活動の協力者となる者に対しては、個人のプライバシー、秘密の保持、自己決定および自律性という個人の権利を尊重し、健全なキャリア発達、および主体的なキャリア選択を損なわぬよう配慮する。このため学会会員は個人の権利や社会規範を侵すことのないよう努力し、個人に心理的苦痛や身体的危害を加える可能性をもつ行動に参加したり、それを認めてはならない。
上記の精神に基づき、以下の条項を定める。
(責任)
第1条 会員は、自らの専門的業務が及ぼす結果に責任をもたなければならない。
(権利と福祉の尊重)
第2条 会員は、研究および実践の協力者、さらに共同で活動する同僚、学生その他の関係者の権利を侵害しないように最大限の努力を払わなければならない。
(2) 会員は、研究及び実践の協力者・関係者の所属する集団の規範や習慣・文化・価値観も尊重しなければならない。
(3) 会員は、研究及び実践の協力者・関係者の幸福や福祉を軽視してはならない。
第3条 会員は、研究や実践の実施に際して、その目的および具体的内容について協力者・関係者に説明し、文書または口頭で同意を求めなければならない。学校、職場、家庭、各種施設などにおいて研究や実践を行う場合には、当該現場の責任者の許可を得なければならない。また、関係者全員の同意を得るように努めなければならない。
(2) 研究や実践を実施する都合によって内容に関する事前の情報開示に制限を加える必要がある場合には、それが個人になんらかの負の影響を与えないことを確認した後、実施後に速やかに事情を説明し、了解を求めなければならない。
(3) 研究や実践の協力者が、自らの意志で参加を拒否、途中で中断あるいは放棄できることを事前に説明しなければならない。ただしこの手続きは、協力者の発達水準や学校等の協力機関の実情に相応した形で伝えられる配慮をしなければならない。
(研究・実践の実施)
第4条 会員は、研究または実践に際して、協力者又は関係者の心身に不必要な、あるいは最少限以上の負担を掛け、又は 苦痛若しくは不利益をもたらすことを行ってはならない。
(2) 研究や実践に際しては、それまでに蓄積されている成果を網羅的に参照し、その研究や実践の必要性を明確にしておかなければならない。
(3) 研究や実践における目的と方法は科学的・学術的な観点から見て妥当なものでなければならない。また、その研究には科学的・学術的に有意義な知見が得られる具体的可能性がなければならない。
(4) 研究や実践の進行中にその活動が協力者の心身を脅かしていることに気付いた際には、その実施を直ちにとりやめ、事態の改善を図る処理を実行しなければならない。
(査定の実施)
第5条 会員は、協力者の人権に留意し、査定を強制し、若しくはその技法をみだりに使用し、又はその査定結果が誤用され、若しくは悪用されないように、配慮を怠ってはならない。
(2) 会員は、市販されている査定用紙や器具、説明書等の利用に際し、違法な複写や模造をしてはならない。
(3) 会員は、査定技法の開発、出版又は利用に際し、その用具や説明書等をみだりに頒布することを慎まなければならない。
(秘密保持)
第6条 会員は、研究や実践の活動によって得られた情報については厳重に管理し、実施時に同意を得た本来の目的以外に使用してはならず、また同意を得た情報以外を利用してはならない。
(2) 会員は、研究結果や実践の成果の公表に際して特定個人の資料を用いる場合には、協力者の秘密を保護する責任をもたなくてはならない。会員をやめた後も、同様とする。
(3) 研究終了後は、個人情報を廃棄する。
(公開)
第7条 研究や実践の成果については、各種学会大会や研究会などでの発表、論文や著書の公刊などを通じて、できる限り社会還元するよう努力しなければならない。
(2) 研究結果や実践の成果を公開するに際しては、研究のもたらす社会的、人道的、政治的意義に十分配慮し、専門家としての責任を自覚して行わねばならない。
(3) 研究のために用いた質問紙、検査や資料等については出典を明記しなければならない。
(4) 共同研究においては、共同研究者の権利と責任に配慮しなければならない。
(5) 一般の人々に対して専門的意見を公開する場合には、公開者の権威又は公開内容について虚偽や誇張、歪曲がないようにし、公正を期さなければならない。また、公開した資料に重要な間違いを発見した場合には、資料の取り下げや訂正記事の発表などにより、間違いを修正しなければならない。
(6) 既に発表した資料や論文を再度公開する場合には、その旨を明記しなければならない。既発表のデータに新たな分析を行った結果を公開する場合も同じである。
(研鑽の義務)
第8条 会員は、本倫理綱領を十分理解し、実行できるために研鑽する機会をもつよう努めなければならない。
(倫理の遵守)
第9条 会員は、この倫理綱領を十分に理解し、これに違反することがないように常に注意しなければならない。
附 則
この倫理綱領は、平成19 年10 月28 日から1 年間は周知期間とし、平成20 年10 月28 日から施行する。
平成24年4月28日一部改訂