ニューズレター 第102号(2018.7.12発行)


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 日本キャリア教育学会ニューズレター 第102号(2018.7.12発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                     https://jssce.jp/
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■ 【開催報告】日本キャリア教育学会中部研究地区部会第1回研究会
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 日本キャリア教育学会中部地区研究部会主催の平成30年度第1回研究会が
開催された。日時は平成30年6月24日(日)13:00~16:00、場所は名古屋
学院大学日比野学舎3階301号室、会費は無料(一般資料代として千円)、定
員は60名であった。
 第1部は、深谷潤一氏(NPO法人ICDS理事長、中部地区研究部会運
営委員)による講演で、演題は「キャリアコンサルティング 属性別ツール」
についてであった。
 第2部はシンポジュウムで、タイトルは「キャリアコンサルティング属性
別ツールの利用法、研究活動等」であった。コーディネーターは長坂廣幸
(6NPO連合・キャリア夢叶塾)、パネラーは服部文彦(南山大学講師)、
話題提供者は深谷潤一であった。
 今回は中部役員で行いました。深谷氏の講演を受講して、本学会研究会を
お願いしました。平成29年度厚生労働省「労働者等のキャリア形成における
課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業
報告書」の座学を行い、シンポジウムで参加者にマイクを回し、細かに理解
を深めた。このような展開が参加者に好評でした。

     (文責:日本キャリア教育学会中部地区研究部会 長坂 廣幸)
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■ 【書評】『世界の学校と教職員の働き方:米・英・仏・独・中・韓との
              比較から考える日本の教職員の働き方改革』
                   (藤原文雄編著 2018 学事出版)
                                               岡部敦(札幌大谷大学)
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 本書を読みながら、今から20年以上前にカナダ・アルバータ州の公立高校
に派遣されていた時のことを思い出した。教師の仕事は教科指導がほとんど
を占め、個々の生徒に対する相談、履修指導、進路指導などは、各校に複数
配置されていたガイダンス・カウンセラーが対処し、複数の教頭が生徒指導
に当たっていた。広範囲の仕事をこなすことが求められる日本での自分の職
務内容(当時は公立高校教員)と比較し、その違いを噛み締めていた。
 さて、本書は米・英・仏・独・中・韓の国際比較を通して、日本の教職員
の働き方改革について検討することを目的に書かれたものである。全体が4
部構成になっており、第1部に学校の役割と教職員、第2部に世界の教育課
程実施体制、第3部に世界の生徒指導体制、第4部に世界の学校運営・学校
事務体制について書かれている。ここでは、キャリア教育に関する記述を主
に取り上げることとする。
 キャリア教育については、第3部において、どんな取り組みを、どこで、
誰が担当しているかという点について各国の担当者が報告している。取り組
みの内容は、国によって異なるものの、個別のカウンセリング、授業として
行われるキャリア教育、職業体験、仕事への移行を踏まえたと既存の教科の
取り組みなどの事例について報告されている。また、これらの取り組みが、
学校内で提供されているのか、あるいは学校外の職場で提供されているのか、
さらには、学級担任などの教員が担当するのか、それとも専門的知見をもっ
たスタッフや専門の教員が担当するのかなどの比較がなされている。
 本書では、タイトルにもある通り、教員の働き方に焦点が当てられている。
終章では、「教職員の『働き方改革』に向けた検討課題-『子供にも教職員
にも優しい学校』に向けて」というタイトルで、中教審などの動きを踏まえ
つつ、日本における教職員の働き方について検討がなされている。特に、巻
末に掲載されているマトリックスが興味深い。日本の学校の機能の大小を横
軸に、教師の職務内容の明確さと曖昧さを縦軸として6カ国の現状を分類し
ている。そのうち日本は「学校の機能大」と「職務内容が曖昧」の交差した
第4象限に位置づけられている。これまでの「日本型学校教育」の良さを認
めつつも、勤務体制・教育活動の分業体制、学校運営・事務の見直しが必要
であるとしている。まとめを読みながら、学校現場での真の働き方改革が実
現することを願うばかりである。
 全体を通して、複数の国の現状を比較することの難しさを改めて認識した。
特に、同じ調査項目であっても、調査内容の範囲や深さには違いが見られ、
また国によっては、地域により実態が大きく異なることも推察される。これ
らの課題は、国際比較を行う上での限界なのかもしれない。しかし、世界の
学校と教員の働き方に焦点をあて、共通した項目に沿って比較検討され、日
本における働き方改革に対して具体的な提言がなされた研究として、本書の
研究上の、そして社会的な意味があると言えるのではないだろうか。
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■ 【コラム】地方の小規模大学の底力
                   国立教育政策研究所 宮古紀宏
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 私は、幸いなことに大規模大学と小規模大学のそれぞれで専任教員の経験
をさせていただく機会に恵まれた。大規模や小規模等といっても、各大学に
は、独自の特色があり、安易に比較し、類別化することはできないが、とり
わけ、小規模大学での勤務経験は、私自身の視野を拓くものであった。すべ
てとはいわないが、小規模大学では、入試を機能させることが難しいことも
あり、経営上、様々なニーズを抱えた学生を引き受けるため、4年間という
限られた時間で、学士号の学位授与に耐えうる教育をしていくことは当然な
がら、卒業後の進路を導き出させて、現実社会へと橋渡しするという重責を
担うことになる。様々にしんどい経験をし、生きづらさを抱えている学生の
教育や支援に、4年間はあっという間である。自分の人生を見つめなおし、
自分を引き受けて、前進していくには、4年間では足りず、本人が希望する
のであれば留年させてあげたいとさえ思ったものだ。
 我が国では、初等中等教育段階の教育の質保証が制度的に担保されている
とはいえないため、初等中等教育での教育経験が不十分な者や、何らかの形
で学校をフェードアウトした者は、大学等の高等教育機関に進学して、学び
直しをしているケースも多い。そのような現状の中、地方の小規模大学は、
学びのセーフティネットとしての機能を果たしている側面がある。そういっ
た大学の在り方には賛否あろうが、決して、初等中等教育のリメディアルに
留まらず、高度な資格取得を含め、将来のキャリア形成に資する下地を形成
して、卒業していく学生は多くいるように思う。
 もちろん、すべての小規模大学がそうとは限らないだろうし、限られた学
内の人員体制、そして、決して十分とは言えない地域の社会資源をどうにか
活用しながら、あえぎ、もがいているところが多いかもしれない。しかしな
がら、厳しい状況で入ってくる学生を丁寧に育てなおしつつ、高等教育が要
求する水準まで、学生のパフォーマンスを向上させている大学が存在しうる
のは事実であろうし、小規模大学の教職員集団の底力は決してあなどれない。
 核家族や母子家庭の増加、生活保護受給世帯の増加、相対的貧困率の上昇
等、いくつかの統計データは、子育てや教育における家庭や地域のしんどさ
を指し示している。乳幼児期の教育が強調されるたびに、家庭的にしんどさ
を抱え、最初からハンディを背負った子供たちが、どうにか初等中等教育や
高等教育の段階で挽回できるような教育制度の大切さを考えてしまうのであ
る。
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