ニューズレター 第101号(2018.6.11発行)


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 日本キャリア教育学会ニューズレター 第101号(2018.6.11発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                     https://jssce.jp/
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■ 【書評】『あなたと働きたいと言われる42のルール』
                     (天川勝志著 同友館 2018)
                     早稲田大学大学院 三村隆男
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 同書は、タイトルにあるように「いっしょに働きたい仲間」に選ばれる、
ことを目的として書かれている。そのために、社会人として人と仕事をして
いくときの考え方を学ぶ。もてなしの心を学ぶとの書き出しから、単なる仕
事のマナーや職場のルール言ったノウハウものとは一線を画す書籍との印象
をうけた。
 著者は社団法人日本能率協会を経て株式会社インテリジェンス(現、パー
ソルキャリア株式会社)に入社し、大学のキャリア教育、就職支援、および
若年者未就職者支援事業に従事してきた。現在は、聖徳大学聖徳ラーニング
センター准教授(2018年4月1日現在)を務め、実際に大学生のキャリア教育を
担当し、豊富な実践事例をもつ。
 学生から社会人への思考・行動の転換を働きかけることをねらい、対象を
大学3年生から新入社員、若手社員においている。同書の目的に近づくには、
自己アセスメントができること、各章に代表される力を習得することとして
いた。職場における人間関係構築が中心となっており、「21世紀型スキル」
で示された4領域のひとつであるWays of Workingのcommunication 及び
collaboration の日本版のようなものとして読んでいくとそうでもなさそう
である。
 構成としては8章立てで、完璧力、社会ルール順守力、対人力、自分事力、
発信力、自立思考力、耐力、キャリアデザイン力と各章に代表される能力が
示されている。各章はいくつかの節で構成され、最初に節のゴールとゴール
に対する自己評価を行い、本文に入るようになっている。節の終わりにはゴ
ールに近づくための「技」が端的にしめされている。事後学習としビジネス
パーソンが学生かによって異なる演習課題があり、考え方を学ぶ道筋をつく
っている。演習課題は日常性につなぐ課題に設定してあり、自分事としてと
らえやすい工夫がされている。
 ただし、多くの節の内容が、著者の持論と実践事例を根拠としているが、
書かれている内容を照射する理論や「21世紀型スキル」などで示された一般
的な資質・能力が示されていないため、読者は納得はするが自らの行動変容
に結びつけていくことができるかは定かではない。
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■ 【コラム】 社会正義と環境型“ネオ・マッチング”支援
                  東海ライフキャリア代表 藤田廣志
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 若者が社会の不条理・不公平に対峙し、それを変えることができると考え
行動していた時代があった。パリのカルチェ・ラタンなど世界各地において
若者による既存体制への反抗が起きていた。ほぼ半世紀前、私は二十歳の青
年であった。大学は“政治の季節”とも言われ、世界の政治・社会問題に取
組み変革しなければならないという青い使命感があった。初期の学生運動は
(陰湿な内ゲバではなく)バリケードの内外で自主ゼミが開かれ、学生が
「大学で何を学ぶかを問う」という健全性もあった。しかし、“社会主義の
理念が美しい”という前提に立ったとしても、人間はそんなに美しくなかっ
た。
 現在、社会正義のキャリアガイダンス論が世界的に注目を集めていると聞
く。格差拡大・貧富の連鎖などキャリア形成に大きな影響を与える課題に対
応し、社会の変化に焦点を当てるワッツの社会・政治的アプローチや、困窮
者の就労に尽力した“パーソンズの見直し”という機運には、約50年前に大
学紛争を経験した一人として共感を持つ部分がある。
 企業側の人不足・採用難が喫緊の課題になる中で、地域のNPOなどで中小
企業の「働き方改革」支援に携わり、就労環境の改善工夫を促す時、多様性
・インクルージョンの必要性ついて企業側に受け容れていただけるケースは
徐々に増えてきていると感じています。
 そして、社会正義実現のために体制・システムの他、個別のキャリア支援
に活用できるスキル・ツールの開発、言わば“社会正義のキャリアコンサル
ティング”が必要ではないかという思いは強くなっています。
 (一社)草の根ささえあいプロジェクトという団体では、「長期離職者の就
労開始後定着実現」の事例調査と自らの実践を踏まえ、個人を変えるのでは
なく、環境側を合わせるという「環境支援型」就労支援プログラムを開発し
ています。
 個人の発達・開発・エンプロイアビリティの向上に重点を置く支援の限界
を超え、働く環境の変化を促す支援を個別支援にも取り入れ、企業と個人双
方の「文化」を大切にしたマッチングのシステムに取り組んでいます。
 半世紀を経て70歳になったキャリアコンサルタントとして、この活動が、
社会正義のキャリアコンサルティングを現実のものとする“ネオ・マッチン
グ・システム”の一つであると嬉しいと・・・。
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