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日本キャリア教育学会ニューズレター 第99号(2018.4.13発行)
発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
https://jssce.jp/
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■ 【開催報告】日本キャリア教育学会中部研究地区部会第3回研究会
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平成30年3月3日(日)13:00~16:00に一宮市市民活動支援センターAB連結
教室において、中部研究地区部会第3回研究会を開催しました。
第1部は、松本禄生教諭(松平高等学校)による講演で、演題は「高等学
校のキャリア教育と地域連帯」でした。定時制高等学校からの赴任、新天地
での出会いと資格試験の取り組みについての考え方を発言され、皆さんの共
感できる気持ちになりました。
第2部は、服部文彦教諭(一宮商業高等学校)による講演で、演題は「高
等学校におけるキャリア教育-キャリアデザインと秘書検定-」でした。今
期で大学講師に転身される彼の奮闘記と秘書検定で生徒を合格へ導き、何度
も新聞に写真入りで報道された実績と自らの資格取得の体験談を聞きました。
第3部は、シンポジュウム「多忙な高等学校教諭が如何にして資格を取得
したのか」で、そのスキル・ノウハウ・心構えについてシンポジュウムを行
いました。コーディネーターは長坂廣幸総塾長(6NPO連合・キャリア夢
叶塾)で、パネラーは服部文彦教諭と松本禄生教諭でした。
中部地区研究部会は、新体制のもとに全国第一位の資格取得希望者を有し、
資格合格者も多数、中部地区研究部会より排出しています。全国的な資格離
れを憂い、積極的な資格チャレンジを参加者に問いかけました。仕事の忙し
さを言い訳にチャレンジをしないのは自分自身からの逃避ではないのか。
服部文彦さんは資格取得により人生の夢、大学講師への就職を叶えました。
彼は4月から名古屋市の南山大学講師です。多くの実践談を聞き、参加者も
共鳴を呼ぶ楽しく為になる良い講演でした。講演後、資格チャレンジャーが
続出したことを、最後に報告いたします。
(文責:日本キャリア教育学会中部地区研究部会
幹事長・統括運営委員長 長坂廣幸)
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■ 【開催報告】日本キャリア教育学会
北海道・東北研究地区部会第2回研究会
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2018年3月24日(土)に、北海道・東北研究地区部会が開催されました。
会場は仙台駅東口ディーグランツ仙台ビルTKP仙台東口ビジネスセンター
カンファレンスルーム2Cです。講師は、浦上昌則先生(南山大学)で、講演
内容は、「『職業』概念再考:『日本(人)』のキャリアを考えるために」
です。当日は23名の参加者がありました。今回は、はるばる近畿や中部地区
からの参加者が複数名いたということも特筆すべき事項です。
今回のテーマの一つは「世間論」でした。「日本には(本当の意味で)社
会はあるのか」という問いかけから、日本にはタテマエの「社会」が、ホン
ネの「世間」を覆っているという構造をあぶり出し、「社会」にはキリスト
教の影響が濃厚に存在する一方で、「世間」はそれとは異質であること、こ
の二重構造が職業観にも影響を及ぼしており、そのことを戦時中に発表され
た尾高邦雄の理論をそれ以前の江戸期・大正期の理論と比較しながらみてい
くという形で議論は進行していきました。途中、グループワークもはさみ、
参加者の満足感は極めて高かったといえます。後日のこのテーマでの議論を
求める声が多数寄せられました。
(文責:弘前大学 吉中淳)
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■ 【開催報告】日本発達心理学会東北地区懇話会共同企画ラウンドテーブル
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2018年3月24日(土)に、日本発達心理学会第29回大会(会場・東北大学
川内北キャンパス)において、日本発達心理学会東北地区懇話会と日本キャ
リア教育学会北海道・東北研究地区部会との共同企画でラウンドテーブル
「目標を持たないといけませんか?―若者の発達課題はどこまで達成されて
いるのか?若者は何を望み、大人は若者に何を望むのか?―」が開催されま
した。話題提供者は渡部昌平先生(秋田県立大学)、富永美佐子先生(福島
大学)そして吉中(弘前大学)の三名です。指定討論者は当初、五十嵐敦先
生(福島大学)が予定されておりましたが、当日、ご病気により吉中が代わ
って務めました。
渡部先生・富永先生からは、目標を持つことには明らかにメリットがある
にもかかわらず、目標を持つということに消極的・批判的な学生や大人は確
かに存在するという報告がありました。また、吉中からはアイデンティティ
無用論への支持が若者に広がりを見せる中、若者は学校時代と成人期とでは
人間関係の根本的な違いがあることに気がついていないことに警鐘を鳴らし
ました。
当日は30部用意した資料は全て払底し、キャリア教育学会の会員・非会員
の方々との活発な意見交換がありました。
(文責:弘前大学 吉中淳)
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■ 【書評】『マインドフルネス-基礎と実践』
(貝谷久宜・熊野宏昭・越川房子編著 日本評論社 2016)
茨城キリスト教大学 藤原善美
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マインドフルネスは、最近、わが国でもNHKで特集が放送されてから注
目を増しています。Googleなどの企業の研修でも、マインドフルネスが仕事
と人生を飛躍させるために重視されるなど、外国でも注目が集まっています。
心理臨床においても、マインドフルネス認知療法は、イギリスの診療ガイド
ラインでうつ病の治療に対し、認知行動療法と並んで推奨されています。マ
インドフルネスストレス低減法(Mindfullness-Based Stress Reduction; MBSR,
Kabat-Zinn, 1979)や、マインドフルネス認知療法(Mindfullness-Based
Cognitive Therapy; MBCT)、弁証法的行動療法(Dialectical Behavior
Therapy; DBT)、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(Acceptance and
Commitment Therapy; ACT)などの心理療法の一環として、臨床現場で活用さ
れています。
本書は、「マインドフルネスの基礎」、「マインドフルネスの心理学的機
序と応用」、「マインドフルネスの実践」の3部に分かれています。「マイ
ンドフルネスの基礎」では、注意訓練による脳内変化、脳画像による効果検
討、内受容感覚、ストレス漸弱性に及ぼす影響、仏教から見たマインドフル
ネスについて記述されています。科学的な記述の中で、世俗的な傾向がみら
れる現在のマインドフルネスへの提言がなされている点は興味深いです。
「マインドフルネスの心理的機序と応用」においては、効果機序、心理学的
基礎、コンパッションなどの援助関係、マインドフルネスという言葉と意味、
導入経験などについて記されています。「マインドフルネスの実践」におい
ては、うつ病・不安症への治療、うつ病への慈悲の瞑想、心身医学、慢性疼
痛、感情調整困難、矯正領域、薬物療法や他の心理療法との比較などについ
て述べています。今後、キャリア教育の研究においても、マインドフルネス
が重要な分野のひとつになることが想定されます。そのような研究をする際
に、本書によってマインドフルネスに関わる基礎的な知識を体系的に得るこ
とができ、有意義な示唆が得られるものと考えます。
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■ 【コラム】誰もが夢を描くことができる社会を目指して
多治見市立滝呂小学校 後藤正樹
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私は、大学でキャリア教育を専攻し、中学校や特別支援学校での勤務を経
て、現在は小学校で特別支援学級の担任をしています。
特別支援学校では、小学部入学後から進路に関わる学習会が行われており、
学校も保護者も将来に向けた準備を早い段階から取り組んでいました。また、
「生きる力」や「生活する力」を身に付けるため、学校での学習内容も工夫
されており、自分にとっては全てが目新しく、学ぶことばかりの毎日でした。
同時に、「保護者はどんな思いや願いをもちながら、日々の子育てを行って
いるのだろうか」と考え、保護者を対象とした意識調査を行いました。
「子どもたちの将来について」という設問では、「少しでも生き甲斐や喜
びを感じて、生きることができるように。」「余暇活動につながる好きなこ
とを見つけ、大人になっても楽しく生活できるようになって欲しい。」と、
「就職」以外に人生に「楽しみ・喜び」を見出してほしいという期待が書か
れていました。また、「将来に向けて家庭で取り組んでいること」として、
「あいさつ」「自分の気持ちを他人に伝えること」等、発達段階に応じて取
り組んでいる様子も明らかになりました。
一方で、回答の中に「将来の夢は無限にあるが、苦しくなるので考えない。」
「毎日の生活に追われ、先のことまで考える余裕がないのが正直な感想です。」
といった文面を見たときは、心が痛くなりました。我々は「夢を育む」「将
来に向けて」といった言葉を用いているものの、「本当に『誰も』が夢を育
むことができるような支援や指導を行っているのか」「夢や将来という言葉
を使うことで、胸が痛くなる人のことを考えているのだろうか」ということ
を感じました。キャリア教育に携わる者として、障がいのある・なしに関わ
らず、誰もが夢を描くことができ、笑顔で毎日を過ごすことができるように、
微力ながら力を注いでいきたいと思います。
<引用文献>高綱睦美・後藤正樹(2010).特別支援学校(小学部)における
キャリア教育―保護者のニーズ把握を中心として- 日本キャリア教育学会
第32回研究大会
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