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日本キャリア教育学会ニューズレター 第97号(2018.2.13発行)
発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
https://jssce.jp/
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■ 【開催報告】日本キャリア教育学会関東研究地区部会第2回研修会
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日本キャリア教育学会第2回関東地区部会研修会「教育管理職へのキャリア
・パス~教職大学院 学部新卒者調査結果(回収率49.7%)から考える~」
(2017年12月8日早稲田委大学国際会議場)報告
教育管理職へのキャリア・パスはいつから始まるのか。首都圏を中心に教
育管理職希望者が急激に減少しているなか、改めてこの問いを取り上げた。
一方、教職大学院の学部新卒学生への調査の結果、教職大学院の授業に教育
管理職教育の導入することに肯定的な回答が7割を上回った。養成段階では
今まで考えられなかった教育管理職教育であるが、教育管理職教育が教師の
キャリア・パス形成においてどのように位置づくかを考えるシンポジウムの
企画であった。
はじめに、基調講演として、わが国の教育管理職任用制度から今後の教育
管理職養成の方向性について、篠原清昭氏(岐阜大学大学院教授)にご講演
いただいた。次に、教職大学院との連携事業の成果と課題について、石田周
氏(東京都教職員研修センター教育開発課課長)に、そして、学校現場の目
線から、早稲田大学教職大学院の第1期修了生である深沢享史氏(小平市立
第六中学校教諭)にご講演いただき、第2部では来場者を交えディスカッシ
ョンを行った。
教育管理職の育成について、篠原氏からは「学校現場での経験知にもとづ
く自生的な育成」や「学校管理職による徒弟的な育成」という現在の形態へ
の懸念が述べられ、今後の方向性として、登用前の養成研修の制度化と機会
の保障が不可欠だという見解が示された。また、石田氏からは、教職大学院
と教育委員会の連携力を高め教育管理職を育成していく展望が示された。さ
らに、深沢氏からは、教育管理職教育の重要性を鑑みながらも、どの職責に
おいても「経験」という財産に勝るものはないという、現場からのリアルな
声が聞かれた。
ディスカッションで篠原氏は現在のインフォーマルな登用制度に警鐘を鳴
らしつつ、キャリア・パスは単なる道筋ではなく、「俺が学校改革をやって
みよう」という意欲に繋げることだと論じた。それは例えば、授業実践や校
務分掌を通じて、自分と学校組織の繋がりを見出し、常に自分なりの問題意
識をもつことだという。
教師が主体的なキャリア選択を行うためには、教育管理職教育という準備
されたレシピだけでなく、教師のキャリア・パスで獲得する実践知や経験知
が不可欠だということを改めて考えさせるシンポジウムであった。
(文責:早稲田大学教職大学院2年 藤澤和駿)
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■ 【開催報告】日本キャリア教育学会中部地区研究部会第2回研究会
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平成30年1月28日(日)10:30~16:00に一宮市市民活動支援センターAB連結
教室において中部地区研究部会第2回研究会が開催されました。三部構成で
実践者3名によるセミナーです。講演者実務の事例研究です。
第1部は蜂谷勝秀氏前愛知産業大学・現愛知県労働基準監督所(中部地区
研究部会・執行部事務局長)、演題は「新しく仕事を探す人・始める人~確
かめよう労働条件を~」でした。今、巷で話題のブラック企業に入社の苦労
をしないように傾向と対策、クライアントが相談に来た時の企業診断とクラ
イアントに対するキャリアコンサルティング技法と対処法・こころ構えを解
説された。実践者は自らの規範のものさしとなりました。
第2部は白上昌子氏・NPO法人アスクネット代表理事、演題は「キャリ
ア教育で広がる学びに向かう力」でした。アスクネット取り組み活動レポー
ト、ワーキングプア、子どもの貧困について実践記に基づく考え方を論じま
した。現代の問題点です。
第3部は山口友美氏・NPO法人atrio代表理事(中部地区研究部会・研
修研究委員会運営委員)、演題は「キャリア教育と働き方改革~関連と重要
性について~」でした。三重県庁でのミッションのレポートと企業主の生き
様を解説、「世の中の様々な体験を通じて感性を磨き、考え、自発的に行動
する力をはぐくむ教育。そして自らの「幸せな仕事」を見つけ、物心ともに
豊かな人生を作り上げる生涯の渡る教育」をアトリオのキャリア教育の定義
とする迫力ある講演で参加者の賛同を得ました。
午前午後の講習でしたが参加者の熱心な思いで時間が足りないほどでした。
今回は多忙な中、高等学校教諭が多数参加されました。次回は高等学校教諭
2名の講演とシンポジュウムの企画です。
第3回は3月に開催致します。
(文責:日本キャリア教育学会中部地区研究部会
幹事長・統括運営委員長 長坂廣幸)
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■ 【書評】『危機のなかの若者たち
-教育とキャリアに関する5年間の追跡調査』
(乾彰夫・本田由紀・中村高康編 東京大学出版会 2017)
早稲田大学大学院 遠藤健
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本書は、1986年度出生コーホートの若者を対象にした5年間(20歳~24歳
時)の追跡パネル調査の分析をもとに、現代の若者をめぐる「多面的問題を
解明する基礎資料を得ることを目的とした」(p.3)著書である。教育社会
学を専門とする編著者らによって書かれた内容は6部17章(410頁)から構
成される。
第1部の「調査の目的と概要」では、そもそも日本では「高い労働需要と
新規学卒一括採用システム」によって学校から職業への移行がそれほど問題
にされず、移行期を継続して捉える調査がほとんどないことを示した上で、
移行が不安定な現代において若者のパネル調査を行う意義を示し、労働(第
2部)、家族(第3部)、地域(第4部)、学校(第5部)、意識と人間関
係(第6部)といった切り口から各論が論じられる。最終章では、「構造的
危機」の状況で最も困難にある若者ほど「出来事としての危機」が生じた時
に、その負の影響を被りやすいことを明らかにしている。
評者が特に印象に残った点は、学歴別の学校経験について分析をすると
「上級学校に進学しない普通科高校の生徒たちは、文脈を失って宙づりにさ
らされている」(「進路展望」「知識・自信」「人間関係」の学校経験が相
対的に低い)という指摘である(第5部11章,p.259)。逆に言えば、進学
校等の学校タイプが明確であれば、学校経験が相対的に高い。著者(藤田武
志氏)が指摘するように、学校が何を提供しているのか、更にはその構造は
どのようなものか、学校タイプを分けた上で再検討する必要がある。例えば、
学校側は進路(学力)別にクラスを編成し、準拠集団をより明確にすること
によって、生徒たちの「文脈」を保とうと試みているかもしれない。このよ
うな点も含めて今後、若者の移行研究を進めていく上で、読者は何かしらの
手がかりを得られる大著である。
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■ 【コラム】保育者のキャリア形成における課題について
神戸女子短期大学 幼児教育学科 川村高弘
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平成27年4月よりスタートした「子ども・子育て支援新制度」における、
待機児童解消に向けた「量的拡充」により、認定こども園は、5,081園(平成
27年4月1日では、2,836園)、保育所等は、27,029施設(平成27年4月1日
では、25,464施設)と急速に増加しています。そのため、これまで以上に保
育者の数が必要となり、近年、保育職の求人件数が激増し、保育業界への就
職がしやすくなっているといった現状があります。
しかし、現在、保育士の平均勤続年数が7.6年(全産業では12.1年)で、経
験年数が浅い層の保育士が多く、7年以下の保育士が全体の約半分と、早期
離職者の多さによる若年層への偏りが深刻化しています。このことから、現
在の保育現場が保育者としての資質向上に取り組み、経験を積み重ね、より
良いキャリアを形成していける状況にあるとは言えません。この問題は、
(1)乳幼児や保護者、地域の子育て家庭にとって良い影響を及ぼさない、
(2)新人や経験年数の浅い保育者にとってモデルとなる先輩保育者が不在とな
るという、主に2つの観点からの悪影響が考えられます。
保育者の離職理由については、「結婚」及び「妊娠・出産」などのライフ
イベント、「給料が安い」、「仕事の量が多い」などの労働条件、さらには
「職場の人間関係」といった理由があります。また、私が授業の中で保育専
攻の学生に対し、「保育者になったら仕事を何年続けたいか」というアンケ
ートを実施したところ、「3年」と回答した学生が約42.5%と最も多く、理
由については、「結婚して子どもを産みたいから」「転職したいから」など
がありました。これらの結果から保育者を長く続けようという意識がもとも
と低い学生が多く、生涯の中で自分らしくどのように働きたいか(生きたい
か)といったライフプラン、キャリアデザインを学生の段階から考えること
が重要だということがうかがえます。さらに、最近、保育現場から、新人や
経験年数の浅い保育者や学生の“打たれ弱さ”“我慢弱さ”の指摘が多く、
これも離職の原因の一つと考えることができます。
今後、労働条件の改善とともに、保育現場と連携しながら、保育者養成校
におけるキャリア教育を含めた養成の質を高め、保育者としての資質と高度
な専門性、さらには協働性を身に付けた保育者を育成していくことが喫緊の
課題であると強く感じています。
【参考文献】
・厚生労働省「保育等関連状況取りまとめ」(2017年9月1日)
・内閣府「認定こども園に関する状況について」(2017年10月18日)
・小川圭子(編)「保育者論-子どものかたわらに 」みらい.2017.
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