ニューズレター 第092号(2017.9.8発行)


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  日本キャリア教育学会ニューズレター 第92号(2017.9.8発行)

                   発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
                     https://jssce.jp/
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■ 【開催報告】近畿/中国・四国研究地区部会 合同研究大会
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 2017年7月8日(土)に、近畿/中国・四国研究地区部会の合同研究大会が
開催されました(会場:大阪大学豊中キャンパス ステューデント・コモン
ズ セミナー室B)。当日は、会員/非会員あわせて35名の方にお集まり頂
きました。
 第1部の基調講演では、寺田盛紀先生(岡山理科大学)より「高校生・大
学生のキャリア形成に関する国際比較研究が教えたこと」と題したご講演を
頂きました。「2009年~2012年の6か国における高校生の職業観比較縦断調
査」および「2013年~2016年の4か国における大学生の職業的資質形成の比
較縦断研究」の一連の研究を通して得られた、1)研究遂行上の配慮と課題、
2)研究結果に関する考察と今後の課題について、興味深いエピソードを交え
たお話を伺うことができました。特に、教育システムの異なる国々の比較を
行うにあたり研究対象をどのように選定したのか、また、研究倫理に関する
様々な問題をどのようにクリアしていったのか等、今後の研究活動を行う上
で参考となる、数多くの示唆を得ることができました。
 第2部のパネルディスカッションでは、「世界のキャリア教育・キャリア
形成支援」と題して、家島明彦先生(大阪大学)、伊藤一雄先生(千代田短
期大学)、古川雅文先生(兵庫教育大学)、寺田盛紀先生(岡山理科大学)
にご登壇頂き、全体討議が行われました。教育システムを背景にした各国に
おける職業観の形成プロセスの違いや、我が国におけるキャリア教育の定義、
とりわけ中教審答申における職業観の位置づけの変化等、様々な視点から議
論が展開されました。実践的には、各国の教育システムの良い点を参考にし
つつ、日本に合った形で教育システムを再考していく必要があること、そし
て、学術的には、職業観に関連するコーリング(calling)や働くことの価
値観等に関する研究を深めていくことが、今後の課題として提起されました。

                 (文責:関西外国語大学 古田克利)
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■ 【開催報告】関東研究地区部会第1回研究大会
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 2017年7月31日(月)9時から17時、関東研究地区部会研究大会・総会が
早稲田大学国際会議場3階第1会議室を会場に東京都小学校キャリア教育研
究会夏季研修会を兼ねて開催されました。
 午前の部では、東京都教職員研修センター企画課指導主事 大城裕司氏よ
り、「東京都のキャリア教育」という演題で次期学習指導要領に向けたお話
をして頂きました。引き続き、全国中学校進路指導・キャリア教育連絡協議
会会長東京都荒川区立第7中学校校長 近江貞之氏より、「中学校進路指導
・キャリア教育の現状」と題して、荒川区立第7中学校の取組を中心にお話
して頂きました。午前中最後の講演は東京都世田谷区立尾山台小学校校長
 渡部理枝氏より、「自分も他者も大切にし、自信をもって挑戦する子ども
の育成~全教科等におけるキャリア教育の実践を通して~」という演題で、
平成27・28年度世田谷区教育委員会「世田谷9年教育」研究開発校(キャリア
教育)の成果について報告して頂きました。
 午後の部では、京都市小学校生き方探究・キャリア教育研究会会長 京都
市立静原小学校校長 林久徳氏より「京都市のキャリア教育と京都市小学校
生き方探究・キャリア教育研究会」と題して、全国キャリア教育研究京都大
会の歩みと静原小学校での取組を中心にお話を頂きました。その後、前関東
地区部会長東京都板橋区立中台小学校校長海藤美鈴氏の司会のもと、参加者
全員から一言ずつ発言を頂きました。続いて、国立教育政策研究所生徒指導
・進路指導センター研究員立石慎治氏より「今後の教育動向とキャリア教育」
という演題でキャリア教育のねらいや背景などをお話して頂きました。そし
て、日本体育大学教授本間啓二氏より、「教員の指導力とキャリア教育」と
題して、新学習指導要領のキャリア教育のポイントについてお話を頂きまし
た。最後に、日本キャリア教育学会会長 早稲田大学教授三村隆男氏に、本
日の会全体をまとめ、締めのご挨拶を頂きました。

        (文責:日本キャリア教育学会関東研究地区部会 代表
                    日本進路指導協会 千葉吉裕)
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■ 【書評】
  『自己発見と大学生活: 初年次教養教育のためのワークブック』
  (松尾智晶監修 松尾智晶・中沢正江著 ナカニシヤ出版  2017)
                      愛知教育大学 京免徹雄
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 本書は、大学の初年次学生を対象としたキャリア教育のためのテキストで
ある。初年次教育科目といえば、アカデミックスキル修得を中心とするもの
が多いが、本書はこれらのスキル(プレゼンテーション、ディスカッション、
調査方法等)を育てる要素を入れながら、「自分の方針」を表現し合い、問
いかけ、そのことを楽しみ喜び合う機会を提供するように構成されている。
その背景には、「大学の初年次学生にこそ、自分は何者なのか、自分はどの
ように学び、どのように生きたいと思うのかという「方針」を自らに問いか
け続けてほしい」という著者の強い願いがある。具体的な構成は、以下の通
りである。

Part I  自分自身を省察し発見する:様々な活動と情報を基に
01 オリエンテーション:自己表現とフィードバックでお互いを知り合う
02 対話を通して知る自分:自分が人生で大切にしてきたことを省察する
03 大学生活を調査する(1):先輩に聞く大学での学び方
04 大学生活を調査する(2):先輩に聞く大学生活の過ごし方
05 自分の「今」を表現する:文章と図で今の自分を表してみよう
06 社会人生活を調査する:
   社会人の先輩に聞く―大学と社会をむすぶ私の大学生活
07 私が大学生活でむすびたいもの:
   社会人へのキャリアインタビュー・レポートと自分の大学生活の発表」

Part II  チームを創り,表現する:私たちが考える「大学生活の愉しみ方」
08 グループワークとポスターセッション
09 発表準備と発表の振り返り
10 「 私の大学生活」発表:スピーチ体験とフィードバック
11 今期授業の振り返り:今後の大学生活に向けて

 Part Iでは、自己理解と他者理解を繰り返すことで、大学生活のビジョン
を構築していく。Part IIでは、グループで活動し、調査・発表することで、
Part Iでつくりあげたビジョンをさらに深化させる。さらに本書には2種
類の別冊、Work BookとReflection Noteも付いており、この分野の専門家で
なくとも授業を展開できるように配慮されている。なお、著者自身も指摘し
ているように、各大学・学部の特性をふまえて適宜アレンジを加えることで、
さらなる有効活用が期待できるであろう。
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■ 【コラム】「高卒就職」いよいよスタ-ト!
              ~リジリエンスの育成を考える~ 
                     名古屋大学大学院 胡田裕教
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 来春高校卒業者の就職選考がいよいよ始まろうとしている。文部科学省、
厚生労働省の通知により今年も選考開始時期は9月16日以降となっている。
 今は、応募書類を作成し事業所への郵送も済ませ、まさに選考を迎えよう
としている時期である。就職希望の生徒を抱える高等学校の現場では、少し
張り詰めた緊張感のある状態ではないだろうか。
 私自身、かつて高等学校で学校全体の進路指導を見渡す立場を経験し、所
属する都道府県の「私立高等学校進路指導研究会」の就職担当も務めさせて
いただいた関係上、この時期になると就職における高校の現場の様子が頭に
浮かんでくる。
 「高卒就職」の応募・推薦方法としては、ほとんどの都道府県で、「一定
期日後複数可」となっている。つまり、一定時期(9月中、10月中など)ま
では1人1社制となっており、その時期を経過して初めて2社もしくは複数
社応募することが可能になる。この部分が「大卒就職」と大きく異なる点の
一つである。
 昨年度の10月末時点での就職内定率は全国平均で74.9%(文部科学省調べ)
であった。これは、逆に考えると、就職希望者の4人に1人がこの時点で内
定が決まっていないことも統計上同時に示している。就職指導担当者にとっ
て、内定の決まっていない生徒たちを適切に指導、支援していくことがこの
時期重要な役割となる。1度または、2度以上の不合格通知を目にした生徒
は、完全に自信を失ってしまう場合がある。それぞれに家庭の事情があり、
保護者からの期待も背負っているのは理解しつつも、再度、応募することに
恐れ戸惑ってしまう場合も見受けられる。その生徒に、チャレンジしていく
気持ちを持たせるには、時間も必要であるし、教員側のかかわりにも根気が
必要となる。そこで、思いつく言葉が「リジリエンス」である。「回復力」
という訳語がよく充てられている。「へこたれない力」というニュアンスを
持つ言葉である。
 これは、生徒側にも、また、もしかすると指導する教員側にも重要になる
力ではないだろうか。知識基盤社会と言われる現代において日頃から、その
ような力の育成を意識した教育実践の重要性も挙げられる。そういった生徒
たちが笑顔で卒業していくためにも就職指導担当者の果たす役割が大きいこ
とを改めて感じさせられる。経験者として、就職を希望する生徒の皆さんと
担当する先生方にエ-ルを送らせていただきたい。
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