★☆★===============================
日本キャリア教育学会ニューズレター 第86号(2017.3.13発行)
発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
https://jssce.jp/
================================★★
□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 書評
「キーワードキャリア教育 生涯にわたる生き方教育の理解と実践」
(小泉令三・古川雅文・西山久子編著 北大路書房,2016)
愛知教育大学 高綱睦美
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
キャリア教育の必要性が叫ばれるようになってからずいぶん経過し、教育
関係者のみならず,さまざまな立場の方が子どもたちのキャリア形成に関わ
るようになってきた。
一方で「キャリア教育」という言葉は多くの方が耳にしているものの、そ
の取り組み方は多様で、何をキャリア教育の核にするのかということについ
ては実践者によって違いがあり、その多様さがキャリア教育に対する捉えに
くさの一因となっている。
新学習指導要領をはじめ教育が大きく動き出そうとしている今、改めてキ
ャリア教育が何を目指しているのか、そして何を核にして取り組むことが重
要であるのか理解しておくことは、これからの社会を生き抜く子どもたちを
支援する上で重要であろう。しかしそうした中、キャリア教育をメインテー
マとしつつ、網羅的に取り扱っているテキストはまだそれほど多くない。
その点、本書は、キャリア教育の位置づけや理論から諸外国における取組
みまで幅広く扱うと共に、学校段階のみならず生涯にわたるキャリア教育に
ついても取り上げており、キャリア形成に携わる者にとって知っておくべき
知識について、キーワードを挙げながら簡潔に記述すると共に、実践のヒン
トを示してくれている。
さらに、各章末に記されているColumnでは市民性教育や学習意欲とキャリ
ア教育の関わり、保護者の役割や時間的展望との関わりなど、キャリア教育
を進めていく際に気になるテーマを深く考えていくきっかけを与えてくれる。
教育現場はますます忙しさを増していく中、本書を読み込みすべてを理解
した上で実践に移すことは難しいかもしれないが、関係する章を手掛かりに、
理論と実践を行き来しながらそれぞれの実態に合わせて試行錯誤を重ねてい
くことがこれからのキャリア教育には必要であり、本書はそのよりどころと
して有効な一冊となると考えている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━