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日本キャリア教育学会ニューズレター 第85号(2017.2.13発行)
発行:日本キャリア教育学会 情報委員会
https://jssce.jp/
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■ ARACDとは~日本キャリア教育学会とのかかわり~
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ARACDは、1970年にアジア地区での教育と職業のガイダンスに携わる者たち
の学会として、the Asian Regional Association for Vocational and
Educational Guidance(ARAVEG)第1回研究大会を台湾で開催した。その後、
1997年にthe Asian Regional Association for Career Development(ARACD)
と名称変更を行った。ARACDは、キャリア発達や人材開発を促進する教育、
ビジネス、政府などにおける個人や組織間の情報や経験を支援し交換し合う
人々の共通理解や連携を強化し、アジア全体の繁栄と福祉と平和に寄与する
ことを目的としている。
第2回以降の研究大会開催国は以下である。( )内は開催年である。
日本(1974)、フィリピン(1997)、マレーシア(1980)、インドネシア
(1983)、インドネシア(1992)、日本(1994)、台湾(1997)、シンガ
ポール(2001)、インドネシア(2013)、日本(2015)、韓国(2017)。
発足してから47年を経過したが、ようやくここ3回の開催が定期的に行われ
ている。開催国における政治や経済の不安、自然災害などに見舞われなが
らも、ARACDは、究極であるアジアの繁栄と平和を目指して活動を続けて
きた。
わが国の日本進路指導協会や日本キャリア教育学会(前日本進路指導学会、
元日本職業指導学会)がながらくその運営を支えてきた。発足のきっかけ
となった1967年のARAVEG 集会や発足を決定づけた1969年の運営委員会の
双方が東京で開催されたことからもその深いかかわりが半世紀に及んでい
ることがわかる。
現在の役員は以下である。会長はARACD研究大会の前回開催国、副会長は、
前々回の開催国及び次回開催国から出すことになっている。
◆会 長:三村隆男(日本)
◆副会長:H. Sutijono, Drs., M. M.(インドネシア)
Kim, Hyuncheol(韓国)
◆事務局長:岡部敦(日本)
◆理 事:Mantak Yuen(香港)、Raza Abbas(パキスタン)、
Hsiu-Lan Shelley Tien(台湾)、Salim Atay(トルコ)、
Saeid Safaei Movahhed、Maryam Behnoodi(イラン)、
Steven Krauss(マレーシア)、
TAN Soo Yin, Ph. D.(シンガポール)、
藤田晃之(日本)、川崎友嗣(日本)
◆事務局:京免徹雄(日本)、家島明彦(日本)
◆顧 問:Darryl Takizo Yagi(米国)、
Lui Hah Wah Elena(シンガポール)、
Mohamad Surya(インドネシア)、
萩原信一(日本)、下村英雄(日本)
(文責:日本キャリア教育学会会長、ARACD会長 三村隆男)
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■ 書評:『はじめてのナラティブ/社会構成主義キャリア・
カウンセリング-未来志向の新しいカウンセリング論』
(渡部昌平著、川島書店)
弘前大学 吉中淳
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キャリア・カウンセリングにおいて「未来」というテーマは厄介である。
キャリア教育は基本的に未来の準備をさせる活動である。ところが、カウン
セリングで著名なロジャースは、「今、ここが大事」と未来のことに言及す
るのを避けているかのようである。
また、因果関係の解明こそが使命と考える研究者たちは、「未来はある意
味で確定しており、後は要因を特定するのみ」といった「決定論」を暗黙の
うちに前提としているともいえる。研究者が研究についてそう考えるのは自
由だが、一般の人々が自らの人生について、そのような決定論的見解をもち、
しかも、その内容がネガティブであったら、その人生は息苦しいというほか
ない。
本書の「ナラティブ/社会構成主義」というのはこの難題に対する一つの
回答といえる。未来は客観的に決まっているのではなく、本人の気づきやナ
ラティブによって構築されるものであると。それはある意味で、近代科学に
対する挑戦にも見える。
本書は、「はじめての」とあるように、優しい語り口で、概念図をふんだ
んに利用しながら社会構成主義によるキャリアカウンセリングをわかりやす
く説明している。本書を片手に取り組めば、筆者のような実践の素人でも、
ともかく一通りのことはできそうという見通しを与えてくれる。
とはいえ、気になったこともある。本書でいう「解決」とは結局、クライ
エントの納得なのか。だとしたら、クライエントが一定の理性的で妥当な判
断ができるということが前提とされよう。最近の若者は「男はお笑い・女は
ファッション」が関心事であるとのことだが、ナラティブの構築に必要な経
験を欠いていることも多いのではないか。実際、本書の事例は、この技法の
土俵に乗せるまでの著者の苦労の記録にもみえる。本書の技法の前提を満た
すための高校までのキャリア教育という課題も浮き彫りになったように感じ
た。
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